「あのビルの上の方、なんで階段状になってると思う?」
建築学科の授業を受けたことがある人であれば、一度は聞いたことがある台詞だろう。建築にとって「ルール」は避けては通れない存在だ。
「建築基準法」はもちろんのこと、「都市計画法」「建築士法」「消防法」、その他各種法令、条例など……。そのほかにも建築物の種類によって教育基本法だったり、労働安全衛生法だったり住生活基本法だったりと個別のルールが存在する。いわゆる「法」だけでも挙げはじめるときりがない。
もちろん国や地方自治体が決めたものだけではない。実際にその建物や周辺に住む人が決めているルールも数多存在する。公園の立て看板や、管理組合や自治会のルールも存在する。建築、ひいては街はあらゆるルールを守ることではじめて成立している。
ルールと向き合う機会を作る『Rules&Commons』
街は建築に携わる人だけではなく、全ての人にとって関係のある存在だ。街を作り上げる上で必要となるさまざまなルールとどう向き合っていくか。それは建築に携わる人以外にとっても無視できないテーマではないだろうか。
東京R不動産などを運営する株式会社スピークは、自社メディア『Rules&Commons by R不動産』をリリース。気持ちよく楽しく面白く、あるいは美しくカッコよく、同時に便利で持続性のある幸福な都市・街をつくるために、問いかけ、投げかける場の提供をはじめた。
学者さんや役人さんたちは、色んなことを深く考えてきているわけで、僕ら一般の意見などは往々にして視野が狭かったりして大して意味のある意見や提案なんてできないんじゃないか?そう思う面は確かにある。
だけど、僕らが違和感を感じることやもっとこうしたらいいんじゃないの?という意見をきちんと伝えることも、ルールを決める人たちにとって判断材料の一部にはなるはずだ。
ルールをデザインすることは、都市をデザインする行為の中でかなり大きな役割をしめるものだ。(このサイトについて より)
Rules&Commonsでは、「景観・デザイン」から「カルチャー」や「テクノロジー」に至るまで多様なカテゴリのルールに対して、事例や提言、インタビューなどを含むコンテンツを発信している。
Rules&Commonsボードメンバーでもあり、法律家/弁護士の水野祐氏は、ルールとの付き合い方についてAMPにて以下のように言及している。
「普段、自分が従っているルールを認識すること、与えられたルールの枠組みから少し出てみること、違うルールで運用してみること、今あるルールを規定のものと捉えずに、主体的にルールづくりに関わっていくことが大切です」
参考記事:身近な「ルール」を自覚し、柔軟に解釈することから変革は始まる——法律家・水野祐
ルール視点で考える
ルールは人が意識していないところにも膨大に存在している。ルールは単に縛り付けるためだけの物ではない。上手く活用することでそのルールは大きな価値を提供することもある。
「ルールを最大限活用することや、ルールの隙を見つけることで、そのスポーツが洗練されたり、より面白くなっていく。オフサイドのルールがないサッカーよりも、オフサイドがあるサッカーのほうが明らかに見ていて面白い。
社会においても、社会を進化させていくためには、既存のルールの余白を見つけ、それを最大限活用しようと試みることで、ルールをアップデートしていくことが大切なのかもしれません」
活用するためにはルールの現状を知り、考える機会を持つことが大切だ。無論膨大に存在するルール全てを把握する必要なんてない。
ただ、何気なく存在するものが、なぜそうなっているのか。ルール視点で考える感覚を養っていきたい。
ちなみに冒頭の階段状のビルは、建築基準法第56条の斜線規制によるものが多い。
img: PEXELS