昨今、科学技術の進歩が凄まじい。人工知能や自動運転、宇宙旅行など、十数年前までは実現するとは思わなかったようなSFの世界が実現しつつある。

「何でもできる魔法の箱」や「夢の印刷機」とメディアで紹介されている3Dプリンターもその一つであろう。

最近では、3Dプリンターで居住用の家を建てられたと話題になった。3Dプリンターで建てられた家とは一体どのような家なのだろうか。また、どのように建てられたのだろうか。

3Dプリンターとは

Apis Corより引用

3Dプリンターとは、3DCADや3DCGのような立体物を表す設計データを元にして、2次元の層を積み重ねて立体の造形物を組み立てる機械のことである。

3Dプリンターで試作品を製作することで、様々な恩恵を享受できる。例えば新商品をリリースするとき。通常、新商品が完成するまでには、複数の作業工程を必要とするため時間や人手が必要になってしまう。しかしながら、3Dプリンターを利用すれば、設計データを元にして試作品を制作するため、「しっかりと作動するか」「どこに不具合があるか」などを素早く検証することができるのだ。

他にも、素早く商品を制作することでより良い完成品を組み立てられたり、一品モノの特注を型などを準備せずに、素早く製作することができるといったメリットがある。開発期間の短縮や商品開発の低コスト化などが望めるのだ。

3Dプリンターで作られた家があるらしい

Apis Corより引用

3Dの設計データと加工できる材料さえあれば、様々なモノを製作することができる。それが、たとえ家であってもだ。

モスクワ近郊で、3Dプリンターを用いて家が建てられた。家を建てたのは建築系スタートアップApis Corだ。サンフランシスコ、モスクワ、イルクーツクに拠点を置いている会社だ。

いままでに3Dプリンターで家を建てる際には、パーツをそれぞれ製作し、現地で組み立てる方法が一般的だった。しかしながら、Apis Corの3Dプリンターは、それ一つで家を丸々建てられるという特徴を持っている。

予算は何円で作られた?

Apis Corより引用

日本では、一世帯が住めるような家を建てるとなると何千万円と言う費用がかかるだろう。それでは、3Dプリンターで建てられた家はどうだろうか。

なんと、3Dプリンターで建てられた家の建築費用はわずか約115万円。従来の建築費用の1/10以下だ。

3Dプリンターで家を建てると、人手をあまり必要としなくなるため、人件費が浮く。加えて、従来の建築技法と違った技法で建てられるため、材料費等のコストが大幅に下がるのだ。これらが、従来よりも大幅に低価格で家を建てられる理由である。

印刷期間は何日?

Apis Corより引用

家を建設するためには、設計図ができてから短くとも数ヶ月は要するであろう。しかしながら、今回の家はわずか1日で建てられた。

使われた3Dプリンター

Apis Corより引用

今回の家を建てるために使用されたプリンターは、Apis Corが開発した特殊な3Dプリンター。

本体はアーム部が4m、高さが1.5m、重さが2トン。トラックの荷台に乗せて移動できる大きさのため、車が通れる場所であればどこにでも運ぶことが可能だ。

加えて、アーム部及び高さは伸ばすことができ、アーム部に関しては最大8.5m、高さに関しては最大3.1mまで伸びる。そのため、様々な間取り・大きさの家を建てられるのだ。

中心の筒の中には、建築用のコンクリートをまぜるミキサーが内蔵されており、24時間毎に最大100平方メートルの建物を建てることが可能だ。

3Dプリンターで作られた家を見てみる

今回Apis Corによって建てられたのは、床面積が38㎡の円形状の平家だ。

Apis Corより引用

上空から撮影された家は、円形のまわりに少し突起が出たような形状のように見える。

Apis Corより引用

家の中心にはリビングがある。このリビングにはテーブルやテレビなどが設置されている。

Apis Corより引用

その周りの突起のスペースにキッチンやお風呂、トイレ等が配置されている。

Apis Corより引用

多人数で住むには少し狭いが、1〜2人で住むには十分な広さの家といえよう。むろん、家自体の造りも万全だ。

Apis Corより引用

材料には断熱・遮音効果のあるモノが利用されているため、一般的な家と大差ないような快適な室内環境となっている。

3Dプリンターでできない作業

家を一軒建てられるほど凄い性能をもっているが、苦手とする分野がいくつか存在する。

衣服や布の縫製

3Dプリンターは、モノを積み重ねて立体物を製作するので、布や衣服といった柔らかいものの縫製はできない。

色付け

3Dプリンターはあくまで立体物を製造するのに特化しているが、完成品は素材の色になってしまう。そのため、パーツなどが完成した後に、一つ一つ塗装を行わなければならない。

強度

塑性加工では同じ造型でも強度を調整できるが、3Dプリンタは造型だけで強度が決まり、強度を高めることができない。

さいごに

場所を問わず低価格で家を建築できるApis Corの3Dプリンター。

今は試験的に行われているが、今後さらにその機能が高まれば、世界の建築業界で普及されていくであろう。特に災害国である日本にとっては、仮設住宅の建設などに役立つことが予想される。