三井不動産レジデンシャルのCSV活動の一環としてスタートした「U26」プロジェクト。26歳以下の世代が、マンションにおいて将来の日本の社会課題を解決するソリューションとなるコミュニティをつくりだしていくことを目的に活動しています。
今年度のU26メンバーが挑むのは、「単身世帯とコミュニティの未来」。今回、舞台となるのは、三井不動産レジデンシャルが展開する都心型小世帯向け分譲マンション『Park LUXE』シリーズです。
U26メンバーは同マンションにコミュニティを生み出すべく、マンション居住者イベントを企画・実施していきます。10月3日に開催されたのは、コミュニティ作りに挑むためさまざまな分野のインプットを行う「U−School」。
今回は、U26企画統括であり、数々のコミュニティ作りに携わってきたHITOTOWAの荒昌史さんを講師に「ファシリテーター入門研修」を行いました。
マンションコミュニティに欠かせないスキル「ファシリテーション」
なぜマンションコミュニティ作りに挑むU26メンバーが「ファシリテーション」を学ぶのでしょうか。荒さんはその理由を以下のように説明します。
「今回、ファシリテーションをテーマに取り上げたのは、マンションコミュニティ作りにおいて一番重要なスキルだと考えているからです。マンションコミュニティ作りを含めた、場のデザインにおいてキーとなる役割がいくつか存在します。ファシリテーターはその1つです」
ファシリテーターは場の顔となる一方で、主役ではありません。主役はあくまでマンション居住者です。居住者が主役となるよう場を取り仕切るのがファシリテーターの役割。住民に良い体験を提供できるか否かを大きく左右するのがファシリテーターだと荒さんは語ります。
今回のU-Schoolでは、荒さんが普段からマンション管理士の方々に向けて行っている、マンションコミュニティにおけるファシリテーション技術の講座をコンパクトにまとめたものを実施。
「今回の講座では、ファシリテーターに必要な4つの要素と8つのスキルを学んでいきます。講座のゴールはファシリテーターのスキルに対して自分の得手不得手を理解し、今後何をすれば克服でき、伸ばせるかを知ること。ファシリテーションスキルの土台を理解してもらえればと思います」
聞いたことはあるけれど意外と知らない「ファシリテーション」とは?
ファシリテーターに求められる4つの要素と8つのスキルを学ぶにあたり、まずは「そもそもファシリテーションとは何か」の理解を深めていきます。
荒さんがメンバーに「ファシリテーションという言葉は聞いたことがありますか?」と聞くと8割方のメンバーが挙手。しかし「ファシリテーションが何かを説明できる人はいますか?」と聞くと皆が手を下ろしてしまいます。そこで荒さんが指名で何人かの声を聞いてみることに。
メンバーからは「発言などを助長するひと」「場を盛り上げる人」「司会」という声があがります。一通り考えたところで荒さんが、答えを発表。
「ファシリテーションという言葉は『集団による知的相互作用を促進する働き』という意味です。といっても少し堅くてわかりづらいですね。つまり『集団によって行われる会議や企画の進行を容易・円滑にすること』ということです」
集団によって行われる、あらゆる会議や企画おいてファシリテーションは求められてきます。今回のU26ではもちろんのこと、社会人であれば会社の会議や企画のブレストなど。学生であってもゼミなど様々な場面でそのスキルは役立ってきます。
ファシリテーターに求められる4つの要素と8つのスキル
ファシリテーションが何かを学んだあとは、ファシリテーターに求められるスキルを考えていきます。まずテーブルごと4グループに分かれ、ファシリテーターに求められるスキルをブレスト・発表するワークを行いました。
1グループ目からは「事前知識・巻き込む力・目的意識」
2グループ目からは「目的・目標の共有・質問力・タイムマネジメント」
3グループ目からは「聞く力、リーダーシップ、コミュニケーション力」
4グループ目からは「時間管理、観察力、意見をまとめる力」
と様々な考えが飛び交います。
それぞれが考えた意見を踏まえた上で、座学に。前述の通り、ファイシリテーターには4つの要素と8つのスキルが求められます。それぞれの要素ごとに具体的な内容とそれに付随するスキルを見ていきます。
「1つめの要素は『場のデザイン』です。ここでは『議論を設計する力』『場をコーディネートする力』の2つのスキルが求められます。目的目標に向けた議論を作り、そのためにどのような場にすべきかを考えるのがここでは必要になってきます」
特にU26にも関わってくるのが「場をコーディネートする力」。ちょうど検討段階にあるマンション居住者向けのイベントにおいても、関わってくるポイントが多々あります。会場選定から当日のプログラム作り、アイスブレイクの内容や議論のルール決めなどです。
「2つめの要素は『対人関係』。ここでは『傾聴する力』『質問する力』がスキルとして大切になってきます。先ほど皆さんに考えてもらった中にもありましたが、対話の中で傾聴したり、質問したりする力はとても大切です。参加者皆が気持ちよく議論に参加し、活発に意見を発することができるか否かはファシリテーターの力次第です」
相手や場に合わせて話をしたり引き出す「傾聴する力」、そして議論を活発にしたり、適切な答えへ導く「質問する力」どちらもU26だけでなく普段の生活でも役立つスキルです。
「3つめの要素は『構造化』です。この構造化で求められるのは『論理展開力』『フレームワーク力』の2つのスキル。どちらも適切な議論が行われているかを判断し、場を整理していく上では欠かせないスキルです」
前提、根拠を理解した上で結論を読み解く「論理展開力」はゴールへと導く道筋を立てる大切なスキル。一方フレームワーク力は議論を階層化・可視化し、活発にする手助けをしてくれます。グラフィックレコーディングや、ロジックツリーなどはその手法の1つ。
「4つめの要素は『合意形成』です。ここで必要となるスキルが『合理的判断力』と『強調推進力』。ただ、前の構造化ができていれば合意形成は自ずと結論に結びつくでしょう」
構造化された情報に評価基準を当てることで結論に導く「合理的判断力」。そして議論の対立を恐れず、適切な議論を経て結果へ導く「協調推進力」。どちらも全員が納得できる結果へ導くためには大切なスキルでしょう。
自分の得意なスキル、苦手なスキルを知る
ファシリテーションに必要な要素とスキルを学んだ後、メンバーは自己分析を行います。スキルが書かれたシートを配布し、それぞれのスキルに対し自分が得意とするものはどれか、苦手なものがどれかを整理。今後伸ばしていくべき要素を考えました。
各自記入を終えた後、グループ内で共有。メンバーからは以下のような感想が聞かれました。
「自分の中で論理的に構造化することは得意だけれど、対人関係の傾聴力や質問力があまり得意では無いので、構造化する力をあまり表に出せていないことに気づいた」
「場づくりは得意だけれど、傾聴力が足らず人の意見を深く考えず文字通り受け取ってしまい、論点がずれてしまうことがある」
「相手が裏で思っていることに気づく傾聴力は自信があるものの、階層化のような論理的思考力が弱いなと感じている」
「論理的に結果へ導くことと、気持ちに寄り添うことのバランスが難しいなと思った」
それぞれ、ファシリテーションにおいて得意とすることは何か、苦手とすることは何か、理解を深めていきました。
スキルを身につけるためは実践が大切
ファシリテーションにおいて大切な要素とスキル、そしてそれぞれの強み弱みを学んだ今回の講座。講座の最後には全体で感想を共有します。
大学生のメンバーは、社会人と比較して感じた感想が異なっていました。
「普段の学校でのグループワークでは友人など、すでに知っている人と一緒にやっていました。社会に出て、社外の人などあまり関係性がない人と、一緒にグループワークするのは難しそうだなと、社会人のメンバーの話を聞いて思いました。今、自分が認識している強みが発揮できるのか、自分が本当に持つ強みは何だろうかと考える良いきっかけになりました」
一方、社会人からは、普段からどう実践していくかを考えたいという感想が聞かれました。
「今回、ファシリテーションスキルを学んだなかで、どう普段の場で活用するかが難しいなと思っています。例えば、客先など実際の打ち合わせで実践するのは難しそうだなと。上手くどこか実践できる場を設けたいと思っています」
最後は、荒さんからスキルを身につける上で大切な考え方をお話しいただき、場を締めくくりました。
「今回、スキルと自分の得手不得手を理解してもらったのは、自分の状況を把握してほしかったからです。スキルを伸ばすためには、いかにスキルを要素分解し、各要素の状況を把握できているかが重要になります。
例えば、野球で守備を強くしたいと思ったときに、捕球や、投げる強さ、走る早さといった要素があります。捕球でもグラブの位置だったり、ボールを目で追う力だったり、いち早くボールの前に立つことだったり細分化されていきます。
漠然と力を伸ばしたいと思っていても伸びるのは難しいのですが、細かい要素に分解すれば伸ばすイメージが持ちやすくなりますよね。具体的に何をすべきかをかみ砕き、自分の力にしていきましょう」
U26では、今後もU-Schoolを通しての学びや実践を通して、テーマに掲げる「単身世帯とコミュニティの未来」に向け、より良いマンションコミュニティ作りに必要な要素を身につけていきます。
今後の展開にも、乞うご期待ください!