自分を綺麗に演出すること。
何かの汚れを取り除き、綺麗にすること。

ジュエリーと掃除道具には、「何かを綺麗にする」という共通項があると、「Studio B Severin」の2人は説明する。

「Studio B Severin」のビルギット・ゼヴェリンとギヨーム・ノイ=リナウドは、2019年に、共同体や環境、美意識との関わりのなかで行われる日本特有の掃除精神をリサーチした。このリサーチをもとにデザインされた「KIREI」は、ジュエリーでもあり、掃除道具でもある新感覚のプロダクトだ。


真鍮製の「LITTER-RINGS」は、指先を美しく演出しつつ、手で直接触れることなく、ゴミ拾いができるようデザインされている。

「DUST-BRACELET」は、大振りサイズが可愛らしいブレスレットだ。真鍮の腕輪に丸めた布が付属しており、これを引き延ばすことで布巾に早変わりする。いつでもどこでも、気付いたらさっと汚れを拭き取れる。

「POLLUTION-NECKLACE」は、ネックレスの一部にスポンジが付属している。水分を含むことで柔らかくなるこんにゃくスポンジだ。「洗顔スポンジ」として説明されているが、他の用途でも使えそうだ。

共同体や、環境との関わりのなかで行う「掃除」

「掃除という行為は、自身と環境との関わりを認識するための、最初の一歩です」と、「Studio B Severin」の2人は語る。「なにかを綺麗にする、という行為は、私たちの心と身体にも良い影響を与えます。掃除を日々繰り返すことで、私たち自身を、そして、私たちが暮らす環境を、見つめ直すためのきっかけになるのではないでしょうか」と。

以前、筆者は京都で掃除文化をリサーチしていた彼らに取材を行なった。その際、京都の日本庭園や滞在先のレジデンスで掃除をすることで、自身を取り巻く環境についてもより深く考えるようになったと共有してくれた。

今では座禅瞑想を毎朝行い、その後に掃除をすることを日課にするようにしています。ここで相手の気持ちや考えなどを話し合って、心を整えます。自分の番、あなたの番、というのではなく、一緒に掃除する、という時間が良いなと思います

京都の無鄰菴で掃除を体験するビルギット・ゼヴェリン。

同じく無鄰菴で掃除を体験するギヨーム・ノイ=リナウド。

「Studio B Severin」はプロダクトデザインだけでなく、ワークショップを開催したり、自らも積極的に街のゴミ拾いに出かけたりと、「掃除という行為」を広めるためのソーシャルデザインも行っている。義務としての掃除ではなく、共同体や、環境との関わりのなかで行う「掃除」という観点から、今後も社会に問いを投げかける予定だ。