世に何か新しいものを生み出す存在として、「起業家」が挙げられる。Google、Apple、Facebook、Amazonなど「GAFA」と呼ばれる企業たちのように、急激に成長して世界に影響をもたらすスタートアップもいる。

一方で、起業家はハードシングスの連続で、その両肩にかかるプレッシャーは非常に大きい。経営上のストレスを抱えやすく、なかなかそれを表に出すことも難しい。投資を受けていると、株主からのプレッシャーもある。

こうしたことは起業家である以上、不可避だ。だが、起業家のメンタルをサポートするための仕組みはもう少し整備されてもいいかもしれない。

「起業家のメンタルヘルス」という課題

起業家のメンタルヘルスという課題については、度々議論されてきた。以前には、UNLEASHでも起業家のメンタルヘルス事情について紹介している。

WEB開発などを行っているゼロベースは、2017年に日本の起業家のメンタルヘルスについてインターネット上で調査を実施。

国外では起業家のメンタルヘルスに社会的関心が集まりつつある一方で、国内では調査が行われていない状況への課題意識から、調査を実施したという。

起業家のメンタルと事業成長を支えるプログラム「escort」

オンラインカウンセリングサービスを提供する株式会社cotreeは、2018年11月より起業チーム向けメンタル支援プログラム「escort(エスコート)」の提供を開始する。サービスの正式リリースに先立ち、10月3日より起業家およびサポーターの事前申し込みの受付を開始した

escortは、起業したチームの「人」の側面に焦点を当てて事業成長を促す。起業家やメンバーのメンタルの問題を未然に防ぎながら、何かあったときにも起業家を支えられるセーフティネットの役割を果たす狙いだ。スポンサー・メンターなどの「サポーター」の支援を受け、社会課題解決に取り組む起業家は無料でプログラムに参加できるという。

事前のテストなどで良好な手応えを得られているcotree代表の櫻本真理氏は、escortをリリースした意図について、このようにコメントしている。

「cotreeはこれまで、メンタルヘルスという問題に様々な切り口から取り組んで参りました。その中で気づいたことのひとつは『困ったら頼って』というメッセージは届かないことがある、ということです。困る前から安心して頼り合える関係性の存在がメンタルヘルスの問題を予防し、何かあったときの支えにもなります。今回リリースする『escort』では、メンタルヘルスという枠組みを超えて、『コミュニティ』『伴走者』『支援者』が起業家としての生き方を支えます。『社会に支えられている。』社会をよくしたいと願う挑戦者たちがこんな風に感じながらチャレンジを続けられる空気づくりを目指して。起業家と社会が育て合うのエコシステムとして、大きく育っていくことを願っています」

起業家を社会で支えていく。そのために、escortは起業家と距離の近いベンチャーキャピタルとの連携も行う。

シード向けベンチャーキャピタル「NOW」と連携

escortは、今回の発表に合わせてシードラウンド向けの投資を行うベンチャーキャピタルNOW株式会社との連携も発表している。NOW代表取締役の家入一真氏は、以前から起業家のメンタルヘルスについてTwitterなどを通じて言及していた。

escortと連携するにあたって、家入氏が寄せているコメントは下記の通りだ。

「起業とはハードシングスの連続です。誰にも相談できず、ギリギリのところまで踏ん張って、ある日突然ポッキリと心が折れてしまう。『起業家は強くあるべき』という空気のもと、見過ごされてしまう。エンジェル投資家として、先輩経営者として、これまで数多くの若き起業家と会って来ましたが、『もっと早く気づいて上げられたら良かった』そう思うことは多々あります。僕自身あまり心が強くなく、それでも起業という選択肢に救われた人間として、そして起業を促進する立場として、失敗した時に「起業は自己責任である」そんな無責任な態度はとりたくない、ずっとそう思っていました。持続可能な社会を目指す起業家の、心の持続可能性を追求していきたい。やさしい革命を起こす革命家に、やさしい世界をつくっていきたい。何かがあったときの支えになれるように、事業の成長を応援し、見守っていく。こうして『escort』をみなさまと一緒にスタートできることを嬉しく思います」

個の時代、多くのことが「自己責任」という言葉で片付けられ、起業家という道を選んだ人には強くその言葉が突きつけられる。

けれど、起業家が社会に果たす役割が大きいからこそ、そのメンタルを支えるための環境を社会で作っていく必要があるはずだ。

escortが、社会に新たな価値を生み出していくための一助になるよう応援したい。