エン・ジャパンが2018年5月に発表した調査結果によると、20代~40代の正社員3111人の中で、「副業に興味がある」と回答したのは88%に及んだ。
しかし「副業経験がある」と答えのは32%。社員に副業や兼業を容認する企業は増えているが、どのように副業人材を受け入れるかという議論は、進んでいないようにみえる。
以前、フリーランス協会を取材したときに、多様な人材を活用するメリットとして、社内にない知見を得られるため、事業の成長スピードをより早くできることが挙げられていた。
確かに、前職で副業に挑戦していたり、自分の関心に沿ったプロジェクトを進めていた方々は、社内にいるだけでは得られない知見や能力を持ち、本業にも生かしていた気がする。もちろん課題はあると思うが、企業が副業人材を活用するメリットは大きいだろう。
副業を「社外での挑戦と成長の機会」を位置付け
そのような調査結果を見つけたとき、ライフネット生命が、新たな採用枠組みとして「パラレルイノベーター採用(複業採用)」を開始した(2019年5月)ことを知った。
同社は、2010年から正社員と契約社員を対象に事前申請により複業(副業)を認めてきた。これまでにも、週3日は同社で働きながら自身の会社も経営する部門長や、週5日同社で働きつつ個人でコンサルティング業務も行っている社員がいたという。
こうした多様な働き方の推進の成果がみられたことから、同社は複業を「社外での挑戦と成長の機会」と位置付けた。社内では得られない経験を得ることで、社員の成長につながったり、社外で得たノウハウやスキルを活かした活躍を期待するとしている。
「多様な志向性や経験を持つ方を採用したい」
新しく設置されたパラレルイノベーター採用は、将来の幹部候補社員を採用する「定期育成採用」の枠組みの中で行われる。応募資格は、入社時に30歳未満であること。採用は随時行われており、勤務日数「週3~4日(応相談)」や雇用形態は「応相談」としている。
選考は「重い課題『C』」と呼ばれる課題による選考を通過後、面接などを実施。同社のWebサイトを見てみると、課題では以下の内容を提出することが求められていた。
“パラレルイノベーターとして採用された際に、ライフネット生命での仕事以外にあなたがやる予定の挑戦について説明してください。説明には下記4つの項目を含めてください。
- どんな挑戦をしますか
- その挑戦によって世界がどう変わりますか
- その挑戦に必要な「人・物・金・情報・時間」は何ですか
- その挑戦を通じてどんな成長を果たしますか”
同社は、プレスリリースの中で「自身がやりたい事業や活動も推進したい人材を採用することで、多様な志向性や経験を持つ方を採用したい。今後も既成概念に捉われないライフネット生命らしい採用のかたちを目指し、挑戦していく」とコメントした。
複業人材の採用では、サイボウズが2017年1月に開始することを発表している他、ランサーズが「オープン・タレント推進室」を設置したり、ベーシックが副業制度を導入するまでの過程を公開するなど、少しずつ動き始めている。
groovesが提供している都市部で働く「副業人材」と、人材不足に悩む「地方企業」のマッチングを行う副業プラットフォーム「Skill Shift」も以前、UNLEASHで紹介した。
ライフネット生命の採用ページには、今回のパラレルイノベーター採用を始めるにあたって、以下のような文章が記載されている。
「翼は2つあるから、高く飛べる――。2つの仕事は、あなたの2つの翼。世界がもっとよくなる、次の時代の当たり前をつくっていくために。複業採用、はじめます」