2017年9月16日〜18日に秋田県で行われた「ナナメ上いく教育オヤジキャンプ」の県北コースをレポートしています。

秋田の新しい教育を知る

2日目がスタート!朝、バスの中では昨日から今日にかけての感想を発表しました。昨日とは打って変わって、2日目の今日は子どもたちも積極的に発表をしてくれます。

「5:30におきて温泉に入ったらとっても気持ちよかった!」
「昨日のボールあそび(パイプラインゲーム)が1番たのしかったです。」

親御さんからはこんな感想も。

「子どもが最初はモジモジしていて心配だったけれど、今はとても楽しそうでほっとしています。」
「昨夜同じ部屋の親御さんと星を見に行きました。子どもたちは元気いっぱいだけれど、私は今少し眠いです。でも、今日のプログラムもとても楽しみです。」

北秋田市のあきたリフレッシュ学園(別名「合川学童研修センター」)に到着!あきたリフレッシュ学園は北秋田市教育委員会が運営する事業で、秋田県教育委員会からの協力も受けています。

全国的にも珍しく、不登校の小・中学生が寝泊まりしながら、学習と生活を行っています。さらに数日から年単位まで様々な期間が選べる、教育留学の受け入れも。長期休みを利用したり、通っている学校の籍は置いたまま一定期間、あきたリフレッシュ学園近辺の学校へ通ったりすることもできるのだそうです。秋田県の高い水準での教育を受けられるほか、大自然の中で、カヌーやスキーも行うなど、季節ごとの体験活動も重視しています。

この日は3名の留学生が出迎えてくれました。館内見学中には、仙台市から留学した6年生の女の子がカナヘビを見せにきてくれ、すっかり秋田の自然になじんでいました。

8月末と12月末の長期休みを利用した、4~5泊の短期チャレンジ留学の説明もありました。親御さんからは「ぜひ参加させたい!」との声も上がります。

実際に寝泊りをするお部屋や生活をする教室、お風呂なども見せてもらいました。1日のスケジュールはこのように規則正しく管理されているそう。

「秋田に住みたい」と熱心にメモを取る子どももいました。

自然を使って大人と子どもが一緒に楽しむ

見学の後は工作室に移動して、木工体験がスタートです。頭ではなく自らの手を動かすことで学びを得る今回のプログラム。子どもには1人1つ、竹と小さな部品が配られました。

教えてくれるのは佐藤先生。助手の留学生もお手伝いしてくれます。

「今日はペンケースを作ります!ガラスで竹を削るのは大変だから、大人の皆さんの協力がないと完成しません。頑張りましょう!」

子どもは説明を聞きながらも、早く作業に入りたくて待ちきれない様子。一方、親御さんたちは、ガラスで表面の竹を削り滑らかにする佐藤先生のお手本に、思わず見入っていました。

ガラスやヤスリを使って木をこすって、表面をひたすら滑らかにする。仕上げに接着剤で貼り付けて、スプレーでニスを塗る、という工程です。

最初の工程でガラスを怖がる子どもが多くいました。親御さんがお手本を見せるように、ガラスで表面を削りレクチャー。だんだんと子どもたちも慣れてきて、上手に削っていきます。

表面をなめらかにする工程はなかなか根気が必要なようです。ここでは体力のあるお父さんが大活躍!くたびれた子どもの分を頑張って削る親御さんもいれば、親御さんにあまり触らせず、自分で全部やりたいと主張する子どもも。どの親子も楽しそうに共同作業をしていました。

仕上げはスプレーでニス。かけすぎないようにそっとスプレーを回しかけます。

ニスを繰り返し施したら、作業は終了!なんと佐藤先生からペンケースに取り付けられる、木工細工のバランスとんぼのプレゼントもありました。ニスが完全に乾いたら宿泊場所まで届けてくれるそうです。

隣の部屋に飾ってあった木の船を見に行く親子もいました。興味津々の子どもから佐藤先生に質問する場面も。

「あの木は何の木?」
「主にこれは杉で、貼り合わせて作ってるんだよ」

「この船乗れるの?」
「実際に乗れるよ。入ってみる?」

普段はなかなか見ることのない木でできた船。さらに作り手に直接質問できることもまた貴重な機会です。子どもだけでなく、お父さん方をはじめとする親御さんたちも夢中になっていました。

その後はお昼ご飯を食べたり、休憩時間には家族が交じり合って一緒に遊んだり。

最後の記念写真の撮影でも、仲良くなった子たちが集まって写っています。親子離れた場所にいる方々もちらほら。

沢歩きで野生の本能を取り戻そう!

再びバスに乗り込み、北秋田市の根子へ向かいます。根子集落は約50世帯が暮らす人口160人ほどの場所。にほんの里100選にも選ばれたそう。

途中、集落が見渡せるところでいったんバスを下車。マタギカメラマンの船橋陽馬さんと、根子で暮らす猟師さんたちも登場しました。船橋さんは2013年に秋田の男鹿から、根子に移住したのだそう。

「根子番楽の取材で来てみたら、おもてなしや伝統が素晴らしくて、魅了されちゃったんです。

みんな、マタギってことばの意味はわかるかな?山の近くで暮らして、猟とかをする人のことね。これからみんなと一緒に山に入って、沢歩きをします。」

まずは根子児童館で沢歩きの準備をし、ついに山の中へ繰り出します!松浦さんからは今回の沢歩きのテーマも語られました。

「ここでのテーマは”野生の本能を取り戻そう!”です。普段はなかなか使わない感覚も研ぎ澄ませてみましょう。大自然を目で見て、聞いて、石とか葉っぱとかも触ってみたり。とにかく楽しんでください!」

最初は怖がって親御さんの手を握っていた子も、だんだんと楽しそうに沢を進んでいくようになったり。子どもも大人も生き生きとした表情を浮かべていました。

転んでもズボンがびしょ濡れになっても、気にしない、気にしない・・

根子で暮らしているリフレッシュ学園の佐藤先生も合流し、みんなに食べてもらいたいからと、見事にヤマメを釣ってくれました。

釣った直後、まだバチバチと動きを止めない魚に、驚いたり、怖がったり、持ってみたいと喜んだり。それぞれ素直な反応を示してくれる子どもたち。

猟師さんから食べられるキノコを教わり、子どもたちで一生懸命集めました。親御さんも含めほとんどの参加者が、山のキノコを集めるのは初めての体験だったようです。

猟師さんたちが石を使った遊びも教えてくれました。

「赤とか緑とか色のついた石を、水につけてよーくこすりつけると・・・こんなふうに色が出る。小さい頃は顔に塗ってよく遊んでたんだ。」

この遊びには親御さんたちもすっかり夢中でした!「自然の中のものだけでこんなに遊べるなんて!」と文字を書いたり、大きな石にペイントを施したり。子どもも親御さんも、時間を忘れてたっぷりと遊んだようです。

食事、番楽から集落の生活を知る

沢歩きを楽しんだ後は、児童館で根子で暮らす人たちが料理を作りながら待ってくれていました。一緒にきりたんぽ作りも挑戦。お米に片栗粉を加えながら、混ぜて混ぜて、集落の人の手作りの木の棒にくっつけていきます。

完成したら外のコンロで焼いて、手作りの特製味噌をつけて、いただきます!自分で作ったきりたんぽは特別に美味しいと、笑顔の子どもたち。

「これだけたくさんの子どもがいてくれたら、楽しいしやりがいがあるなあ」と根子の猟師さんたちも喜んでくれている様子でした。

「熊って毎日食べるんですか?」
「いや、3か月に1回くらいですよ。」
親御さんたちは根子に興味津々で、会話も繰り広げられていました。

そして夕食が完成!根子に伝わる伝統的な料理を、集落の皆さんに作っていただきました。

メニューは写真右下から時計回りにまずは「熊鍋」。ごぼうや人参、ゼンマイなどを使った「でんぶ」。人参、大根、くるみ、豆腐、ゴマなどを和えた「すやっこ」。人参、ミズコブなど約7つの食材を使った「ナッツ」、手作りのお漬物、果物に砂糖ともち米粉、酢を混ぜたデザート「あさづけ」。

食後は地元の子どもたちが、国の重要無形民俗文化財にも指定されている根子番楽を披露してくれました。根子番楽に使う楽器を触らせてもらう時間も。

帰る頃までには根子の子どもたちとも一緒に、自由に走り回って遊ぶようになっていた子どもたち。

「東京では外出中は周りに迷惑をかけてしまうから、子どもをこんな風に自由にさせてあげることはできないんです。知らない子ども同士でこんなにすぐに仲良くなって遊ぶ姿なんて、初めてみました。」
と話す親御さんもいました。

・ナナメ上いく教育オヤジキャンプ 県北コース vol.3へ

次回開催情報:

「秋田の教育ミートアップ!Vol.2」

9月16日〜18日に開催した、「ナナメ上いく教育オヤジキャンプ」には9家族27名の方が参加し、秋田の教育・子育て環境をさまざまな角度から体験しました。

今回のイベントでは、キャンプ参加者をゲストに招き、秋田という場所だからこそ実現できる教育・子育ての可能性を考えます。ゲストを交えた対話の時間はもちろん、交流会もご用意しておりますので、ぜひご参加ください!

【日時】2017年12月10日(日)13:00〜15:30 (受付開始12:30〜)

【場所】 TIP*S 独立行政法人中小企業基盤整備機構 (東京都千代田区丸の内2丁目5−1 丸の内二丁目ビル6階)

【ゲスト】
県北キャンプ 参加者 鈴木祐之さん
県南キャンプ 参加者 八塚裕太郎さん
ほか「ナナメ上いく教育オヤジキャンプ」参加者の皆さん

詳細はこちらから!

(写真/馬場加奈子)