大切な人を大切にする生き方がしたい。inquireの経営企画・PMを担当する中楯知宏が見つけた、揺るぎない人生の軸

生きることを、時々、難しく考えてしまう。

仕事やお金、恋愛や人間関係、過去の失敗、見えない将来……。

人生を構成する要素はたくさんあって、そのどれもが簡単には扱えないものばかり。考えれば考えるほど深みにハマってしまうし、悩みは解決するペースよりも増えるほうが早い。

「人って、何のために生きているんだろう」

北海道に住みながら、リモートでinquireの経営企画に携わる中楯知宏(なかたて ともひろ)も、会社員時代に人生に悩み、生きる意味を探していた一人だ。

一時は落ち込んでいた彼だが、ある人との出会いにより人生の転機が訪れる。

会社を辞め、東京のアパートを引き払い、北海道へ移住。現在はフリーランスとして、複数の企業のブランディングや経営、組織づくりに携わるようになった。

inquireと出会うまでに彼はどのような道を歩んできたのか。どんな出会いが彼の人生を変え、北海道へ足を向けさせたのか。彼が見つけた「生きる意味」とは——。

そのストーリーを、追いかけてみた。

[プロフィール]
1988年大分県生まれ、福岡県育ち、現在北海道在住。東京大学大学院新領域創成科学研究科修了。新卒でネットの八百屋に入社。プロジェクトマネージャー、統合マーケティングマネージャー、ブランドマネージャーを担当後、独立。現在複数の企業のブランディングや経営、組織づくりに携わる。

Twitter:https://twitter.com/RossNakatate
Facebook:https://www.facebook.com/tomohiro.nakatate

北海道に住みながら、inquire全体の組織課題を見つめ直す

——私(筆者)は愛知県、中楯さんは北海道に住みながらinquireに携わる「リモート組」ですね。プライベートな話はあまり聞いたことがなかったので、楽しみにしていました。よろしくお願いします!

中楯:こちらこそ、よろしくお願いします。

——中楯さんは、inquireでどのような仕事をしているのでしょうか?

中楯:主に経営企画と社内事業のPM(プロジェクトマネージャー)を担当しています。前者は、inquire全体の組織や事業回りの課題解決をすることが目的です。人事・採用・広報・経理・コミュニケーション周りのタスクを整理して、みんなが働きやすい環境を作っていますね。

——会社全体の様子をバランス良く見ているんですね。PMは具体的にどんなことを?

中楯:今はライティングコミュニティ『sentence』のPMを担当しています。具体的に言えば、事業全体のタスクやスケジュールの管理ですね。入った当初はPMだけを担当していたのですが、そもそも事業全体の課題があるように思ったので、ジュンヤ(inquire代表)さんに「そっちの解決をしませんか?」と提案したんです。

——自分から経営企画の業務を打診されたんですね。知らなかった……。

中楯:人を増やしていくためにも、組織全体の課題は早めにクリアしたほうがいいと思って。「この会社にとって何が必要なんだろう」と考え、新規プロジェクトのマネジメントや課題解決をやっていくことは前職でも経験していました。物事の「そもそも」を突き詰めるのが好きで、大学時代は物理学を専攻していたんです。

国際協力に興味を持っていた学生時代

——納得です。大学時代は、物理学の勉強に力を入れていたんですか。

中楯:それが、途中から「国際協力」に興味が湧いてきたんですよね。海外放浪をしていた祖父に影響を受け、大学1年生のときにブルーマン(※1)見たさでニューヨークへ行ったんです。初めての海外でもあり、すべてが新鮮で楽しかったのですが、英語が話せなくても楽しいけど、話せないことで嫌な思いがする人がいるのが嫌で……。英語を勉強しようと決意し、帰国後に英会話塾へ通うことにしたんです。授業とバイト以外の時間はすべて英語に捧げて、少しずつ苦手意識を克服していきましたね。

※1 : 1991年に結成されたパフォーマンスアート・カンパニー。世界中でそのクリエイティヴなステージ・プロダクションで知られる。

——英語を話せるよう地道に努力をしたと。国際協力に関心を持ち始めたのは、その後でしょうか?

中楯:そうですね。英語に慣れ始め、もう一度海外へ行きたいと思うようになり、新しいことに挑戦する意味でも「海外インターン」を探しました。結果、インドのNGOでインターンをすることになり、現地のスラム街に住む子ども達が無償で授業を受けられるよう、教師として現地へ向かいました。

——その子ども達とは、英語でコミュニケーションを?

中楯:いや、彼らは英語を話せなかったので、ボディランゲージなどを使って意思疎通をしていました。大変でしたけど、元気な子ども達と触れ合ったり、インターンに参加する他国の人たちと話したりできたのは楽しかったですね。一方で、当時の自分にとっては衝撃的な出来事もあって。

——衝撃的な出来事、ですか。

中楯:人生で初めて、物乞いの女の子に出会ったんです。「お金をちょうだい」「ご飯を分けて」と声をかけられ、思わずお金をあげそうになったのですが、近くにいた現地の人から「(お金や物を)あげてはダメだ」と言われて。何もあげずにその場を去ったものの、心の中にはモヤっとした感情が残りました。

——日本ではなかなか見ない光景ですよね……。その少女との出会いをきっかけに、国際協力に興味を持ったんですね。

中楯:国際協力の文脈で、自分にできることを考えるようになりました。その分野で自分の関心のあるテーマ(食料廃棄やフードロスなど)を自由に研究ができる東京の大学院に進学したのも、それがきっかけです。研究をしながら、国際協力の活動にも参加していました。ラオスで廃棄物処理の環境を整備したり、中国の学生と資源問題について2週間討論したり、途上国向けのプロダクトコンテストの運営に参加したこともありました。国際協力関連のイベントは、いくつか参加していましたね。

「食×ビジネス」で、世界の食料問題を良くしたかった

——大学院卒業後も、国際協力の分野で就職を?

中楯:最初はJICAや国連など、国際協力関連の組織で働きたいと思っていました。ただ、JICAを通じたインターンや、ユニセフの事業視察など、過去の経験を振り返ったうえでそこで働きたいかと聞かれると、そうは思えなくて……。僕が過去に参加したプロジェクトもそうですが、結局、現地の人からお金が生まれるわけじゃないので、サステナブルじゃない。だったら、ビジネス的な観点でやったほうがいいのかなと。

——JICAや国連に入る道ではなく、別の選択肢が現れたんですね。

中楯:「食×ビジネス」の分野で、一般企業への就職を考えました。

——国際協力にも様々な形がありますよね。中楯さんが、なかでも「食」にフォーカスしたの理由は?

中楯:「食」は、人種や言語、年齢や性別、生まれた時代すら関係なく、この世にいる誰しもが生きるために必要としていますよね。一方で、世界では生産されている食料の約3分の1が廃棄されている。食の分野でおもしろいことや、人のためになることができたら、より多くの人たちを幸せにできるのではと考えたんです。

——世界の「食」にまつわる環境を良くしたいと思い、ネットスーパーの企業へ就職をしたと。入社してからは、どんな業務を担当していたんですか?

中楯:1年目はプロジェクトマネジメントを担当していました。具体的には、新しい企画を考えるときに必要なシステムやオペレーションの組み立てですね。

2年目になるとチームマネージャーとしてのKPIも達成できるようになり、会社としてもブランドを強化したい時期だったので、社長に「ブランディングを担当させてください」と直訴。その結果「ブランド事務局」なるものが発足し、異動しました。以後、ブランド事務局長として予算の策定やメンバーの招集、具体的になにをやるのかも全部主導して決めていきましたね。

——すごい……!新卒2年目から、能力を見込まれて大きな仕事も任されていたんですね。

中楯:会社ロゴの変更・刷新などのアウターブランディングから、社員がいきいき働ける環境づくりなどのインナーブランディングまでブランディング全般の業務をやっていましたね。

ある人との出会いが人生を変えるきっかけに

 

中楯:無我夢中で頑張っていましたが、3年目の秋頃になると、自分の精神力と体力が追いつかず、心の中で張りつめていた糸がプツリと切れました。初めて「会社に行きたくない」と思うようになり、少し鬱っぽくなってしまって……。

——一度でもそう思ってしまうと、なかなか立ち直れないですよね。私も同じような経験があるので、中楯さんの辛い気持ちが想像できます。

中楯:電車の中で泣けてくるほど、精神的に参っていましたね。仕事も人生もどうしようと悩み続け、落ち込むばかりだったのですが、ある出来事によって一気に視界が開けたんです。

——何だろう……。すごく、気になります。

中楯:今の奥さんとの出会いです。ひょんなことから彼女と知り合い、自分でも驚くくらい気が合ったので、出会った当日に交際をスタート。よほど相性が良かったのか、一週間で結婚が決まり、一ヶ月半後には入籍していました。

——す、すごいスピード感!それは、“運命”を感じますね。奥さんのどこに惹かれたんですか?

中楯:二人で話しているときに、奥さんが何気なく「人ってなんで生きていると思う?」って聞いてきたんです。僕が答えにつまっていると、彼女は「自分を幸せにするためだよ」って。自分が幸せじゃないと、周りの人は幸せになれない。自分が幸せだったら、周りの人だって幸せになる。奥さんのおかげで、自分を幸せにするというマインドができたんです。その瞬間、「ああ、この人とずっと一緒にいたいな」と思いました。

——奥さん、とてもすてきな方ですね。

中楯:彼女はマインドの言語化も上手で、ホワイトボードでお互いのやりたいことを書くようになりました。自由な働きかたがしたい、いろんな場所へ旅がしたい、大切な人を大切にしたい——。二人の想いがホワイトボードを埋め尽くすなか、「彼女といる時間を大切にしたいのに、1日に8時間以上もオフィスにいるのはどうなんだろう」と思うようになって。当時、彼女がフリーランスだったこともあり、そういう働き方もあるのかと知って、会社を辞めることにしたんです。

——北海道へ移住したのも、お二人の「やりたいこと」を尊重した結果ですか?

中楯:そうですね。会社を辞めるタイミングで子どもが生まれることも分かったので、自然豊かで、美味しいものがあり、住みやすいところを探していました。そのとき、東京で「本気の移住相談会」(北海道版)が開催されていて、そのときに良いなと思った街に実際に見学に行き、引っ越しを決めましたね。

ひとつの記事を通して、inquireに出会う

——北海道へ引っ越してからは、どのように仕事をしていたのでしょうか?

中楯:フリーランスとして、前職の仕事や単発のライター案件、企業のコンサルタントやブランディングを請け負っていました。ただ、コンサルをやるにしても、やっぱり組織にいないと廃れる感覚があるんですよね。

——詳しく教えてください。

中楯:結局、個人でできることにはどうしても限りがある。ブランディングは組織づくりと密接に関係しているので、自分の手を動かしてインナーからアウターブランディングまで一貫して関わるためにも、自分のフィールドを一つ持っておくほうが良いなと思いました。

そのうえで、もともと情報発信にも興味があり、メディアの在り方や、ライターの在り方について考えていた頃に、ライターの塩谷舞さんが運営するメディア『milleu』の記事を読んで、inquireがPMの募集をしていたのを見つけたんです。

——あの記事がきっかけだったんですね!記事が公開されたのが2018年の3月後半だから、中楯さんがinquireに入ってから約7ヶ月かな。inquireという組織の印象は掴めてきましたか?

中楯:「言葉」を大切にする人が多いですよね。それぞれに興味のあるテーマやトピックがあって、好奇心や感性をもとに追求し続け、キャッチした情報を頼りに言語化する。自分のやりたいことを「言葉」と共に突き詰めている人が多く、そこが組織としての強みだと思っています。

——共感です。「言葉」に真剣に向き合い、その力を信じている人が多いですよね。

中楯:僕も「言葉」の力は信じています。奥さんと出会って、自分の生き方を言語化しているうちに、実現したいことは全て叶ってきました。inquireにも、自分のやりたいことをちゃんと口に出して言う人が多いですよね。「言葉」をちゃんと大切にできる人たちの集合体のような気がする。

——「言葉」の力を信じ、真摯に向き合うinquireだからこそできることがあるのかなと思います。

中楯:記事一つで人の人生って大きく変わると思っていて。人の心や思想を動かすようなアイデアや言葉が詰まった「すてきな記事」との出会いによって、人生を良い方向に変えられる人が増えると良いなって思います。それをinquireが率先して作っていくのが理想ですね。僕自身、塩谷さんの記事を通じてinquireと出会ったように、inquireの記事によっていろいろな人と人を繋いでいきたいです。

リモートならではの工夫、フリーランスとしての働き方

——同じ「リモート組」として気になっていたのですが、中楯さん自身はリモートで組織に関わる難しさって感じられていますか?

中楯:感じていますね。世間的には「通勤時間もなく、時間を自由に使えてストレスなさそう」って思われがちですし、たしかに時間は自由に使えるのですが、その分自律しないといけない。リモートはメンバーと対面で会うのが難しいので、チャットやオンライン会議での会話だけで信頼関係を築く必要があります。組織に深く関わる役割だと、コミュニケーションが大事です。

とはいえ、僕自身、北海道に住みながらでもinquireと関われているので、リモートでも組織に関わることはできますよ!

——私も愛知県に住みながらinquireの仕事に携わっているので、「コミュニケーション」が大事というのはとても共感します。

中楯:あと、オンラインチャット上でのやり取りの流れも気をつけています。基本的に誰かが発言したことはスルーしませんし、「チャットが盛り上がるタイミング」は、なるべく乗っかるようにしています。その方が、議論が進みやすいんですよね。

——なかなか対面で話せないからこそ、チャットの有効活用は重要ですよね。個人的には、自己開示を積極的にすることも大切だなと思っています。

中楯:それは同感ですね。リモートで働いていると、仕事はできても、どんな人なのかって伝わりづらい。やっぱ一緒に働くなら、お互いのこと多少は知りたいじゃないですか。なので、リアルで会える機会があればなるべく参加します。参加できなくても、noteやSNSも上手く使って自分を知ってもらう努力はもっとしていきたいですね。

——先ほど、リモートで働く以上はオンとオフの時間を自分でコントロールする必要があると話していました。中楯さんは、具体的にどうやって仕事とプライベートの線引きをしているんですか?

中楯:意識的に家族との時間を取るようにしています。土日は必ず休み、家族でランチしたり、近所を散歩することも。平日もちょっとした時間に子どもと遊び、18時以降は夕飯を食べたあとに子どもをお風呂に入れて、洗濯などの家事もしますね。子どもを寝かしつけてからは、奥さんと今後のことを話すタイムも取るようにしています。

——意識的にメリハリをつけるんですね。私も見習わないと……。奥さんと今後のことについて話すとき、どんなテーマが話題に上るんですか?

中楯:よく出てくるのが、旅をしたいということです。死ぬまでにあらゆるところへ足を運び、自分の知らない世界をたくさん見ておきたい。自分たちだけではなく、子どもも連れて。ただ単に旅をするだけじゃ面白くないので、各地で得た情報の発信もしていきたいですね。

——中楯さんが世界から発信する情報、楽しみにしています!最後に、中楯さんがinquireで一緒に働きたい人物について教えてください。

中楯:困難な状況でも、ポジティブに解決していける人が理想ですね。「ハプニングがいっぱいあってハッピー!」くらいのマインド。(笑)特別なスキルよりかは、そのマインドを持っている人と一緒に働きたいです。あとは、さっきも言ったように「言葉」の力を信じてる人。「言葉」で世の中の人に影響を与えていきたい人は、inquireのメンバーともマッチするんじゃないかな。

人生は単純さ、きっと簡単だ。

そう歌ったのは、シンガーソングライターの高橋優だ。インタビューをしながら、『シンプル』と題されたこの曲が、彼にぴったりだと思った。

人生に悩みは付きもので、今日も、明日も、全てを投げ出したくなるときがある。

けれど、自分の中に揺るぎない「軸」を見つけた瞬間、その足取りは驚くほどに軽くなるのかもしれない。

「大切な人を大切にする生き方」を見つけた彼が、そうであったように。

 

(文:なかがわ あすか)

(写真:小山和之)


 

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