ビジネスとカルチャーを横断する存在でありたい。94年生まれの編集者 岡田弘太郎の今とこれから

年齢なんて、多分ただの数字に過ぎない。
二つ下の彼の仕事ぶりを見ていて、そう感じるようになった。

編集者として複数のプロジェクトに奔走しながら、ライターとしても骨太な記事に挑戦するー。
その力量はメンバーの誰もがすでに認めているし、彼のこれからにも皆が期待を寄せている。飲み会では「岡田くん」の将来が話題に上ることも多い。

いつも飄々と仕事をこなしているように見える彼は、今どんな想いを抱いて日々の仕事に向き合っているのだろうか。その内に秘めた想いをのぞいてみたい。

[プロフィール]

1994年生まれの編集者 / DJ。慶應義塾大学でデザイン思考/サービスデザインを専攻。在学時に『greenz.jp』や『SENSORS』で執筆、複数のウェブメディアで編集を経験し、現在は編集デザインファーム「inquire」に所属。ミレニアル世代向けのビジネスメディア『AMP』や『UNLEASH』の編集に携わる。音楽ビジネス誌『gig』編集長。関心領域はビジネス、カルチャー、デザイン、テクノロジーなどを横断的に。Twitter:@ktrokd

共通するのは“ディグる”感覚。音楽からメディアに出会うまで

——岡田さんは大学4年のときからinquireに関わるようになって、1年間休学をしたんですよね。いわゆる普通の就活はしなかったんですか?

岡田 就職活動解禁前の夏にいくつかスタートアップのインターンシップに参加したり、編集者やライターとして入社できる企業を探したりはしていました。けれどどこかピンとこなくて。もともと大学2年生の頃から個人で編集やライティングの仕事をしていたので、就活せずに稼いでいくための準備期間として休学をしようと考えたんです。

——大学2年生から編集やライティングの仕事をしていたんですね。早いな…。ずっとメディアには興味があったんですか?

岡田 ちょうど大学2年生の頃に、佐々木紀彦さんの『5年後、メディアは稼げるか―Monetize or Die ?』を読んだのが始まりですね。マスメディアの立ち位置の変化やウェブメディアの台頭など、地殻変動の激しいメディアビジネスそのものに興味を持ったんです。

その頃、同じく大学2年生くらいから、編集者の佐藤慶一さんが運営されていたブログ『メディアの輪郭』をよく読んでいたので、彼が参加していたソーシャルデザインをテーマとしたマガジン『greenz.jp』のインターンに応募しました。

そこから記事を書くようになり、『SENSORS』や『Biz/Zine』といったビジネス・テクノロジー・デザイン分野のメディアで記事を書くようになったんです。

——なるほど。「ライターになりたい!」という想いより先に、メディアビジネスそのものへの関心があったんですね。

岡田 そうですね。ただ、世の中に知られていない価値を発掘して届けたいという想いは昔から常に持っていました。というのも、僕は高校生の頃から音楽が大好きでDJとして活動していたんです。

DJって誰も知らない音楽をいかに発掘するかが問われ、それを届ける役割です。僕自身はその「ディグる」ことが醍醐味のひとつだと思っていました。まだ知らない価値を発見し、届ける。その点は、編集やライティングにも共通しているし、自分がやり続けたいんだろうなと思うんです。

常に思考のストレッチが求められる、inquireでの日々

——すでに複数の媒体でライターをしているなかで「inquire」に携わるようになったのはなぜだったんでしょうか?

岡田 僕が大学3年生の時にジュンヤさんがinquireを設立されていて、「編集デザインファーム」という概念に興味を持ったんです。

その頃は大学のゼミでサービスデザインを学びながら、個人で編集やライティングに携わっていました。この二つの領域を掛け合わせて価値を生み出せないか考えていたので、それを実践されていると聞いて、面白いに違いないと。

そのときはジュンヤさんに編集やデザインについて話を聞いただけだったのですが1年後くらいにgreenz.jpのイベントでジュンヤさんに会う機会があって、「今ちょうど就活なんですけどしっくりくる組織がないんですよね…」という話をしました。自分が今何をやりたいのかも含めて伝えたところ、inquireに誘ってもらい、今に至りますね。

——今ではinquireで沢山の仕事を任されていますが、inquireや個人では今どのような仕事をしているんですか?

岡田 AMP』や『UNLEASH』といったメディアの運営と編集、『sentence』というライティングコミュニティの運営、あとは単発でライティング案件を担当することもありますね。最近ではイベントの企画・運営なども任せてもらっています

個人では、いくつかのメディアに編集者やライターとして関わったり、企業の広報ブログの運営や、製品の導入事例の制作、あとは編集者の菅付雅信さんの事務所やシンクタンクなどで企業の新規事業に関する案件のリサーチやコンサルティングをお手伝いしています。

領域としては幅広い仕事のように見えるのですが、自分のなかでは大きく二軸で捉えています。一つはメディア運営や編集、ライティングなど、いわゆる「編集者/ライター」のスタンダードな仕事。二つ目は企業の新規事業開発や課題解決に編集スキルを活かして貢献する仕事。後者は大学で専門的に学んだサービスデザインと重なる領域ですね。

——その二軸に対して限られたリソースをどのように配分しているんでしょうか?

岡田 特に割合などは厳密に決めないようにしています。ただし単発で関わる仕事よりも、継続的に携わり、本質的な課題解決に取り組める仕事を選ぶようにはしています。それ以外は与えてもらった機会を活かせるよう頑張ろう!という心意気でやってきました。

——inquireで多くの仕事に取り組まれてきたかと思いますが、特に印象的だったものはありますか?

岡田 編集者としての仕事でいうと、やはり『AMP』の立ち上げですね。ゼロからメディアのコンセプトや思想を形にしていく作業は苦しくもあり、圧倒的なやりがいを感じました。

それまでは出来上がったメディアの枠内でどんなコンテンツをつくるかを考えていて、「そのメディアにおいてこのコンテンツの位置づけは?」と“線”で思考できていなかった。『AMP』では「このメディアが今何を伝えるべきか」、それを踏まえて「自分は何を取り上げるのか」といった視点が求められました。

——編集する上で一つ上のレイヤーから思考できるようになったんですね。ちなみにライターとして思い出に残っている仕事はありますか?

岡田 同じく『AMP』で書かせていただいた水野祐さんのインタビューですね。カルチャーを愛しているからこそ、“弁護士”として担い手たちを支援するポジションにいる水野さんには個人的にも憧れを抱いていました。出来上がった記事を水野さんに確認いただいた際に『大変よく意図を汲んでいただき嬉しかったです』とおっしゃってもらえて嬉しかったですね。ジュンヤさんにも大量に赤入れをいただき、何とか書き上げた原稿だったので喜びも増しました。

フリーランスで働いていると、実績ベースで仕事の依頼が降ってくるので、油断すると簡単にこなせる仕事ばかりを抱えてしまう。メディアの立ち上げやイベントのモデレーターなど、コンフォートゾーンの外に出る機会をもらえるのは本当にありがたいですね。

またinquireでは年齢関係なく一人のプロフェッショナルとして仕事を任せてもらっています。質問すれば何でも教えてもらえる環境だけれど、自分の頭で答えを出して行動しないといけない。プレッシャーもありますが、成長を求める上では申し分のない環境だと思います。

“問いと内省”の組織で働く経験がもたらした変化

——スキルの面以外にinquireに入って変わったなと感じることはありますか?

岡田 内省する機会が増えたことでしょうか。inquireでは定期的に個人面談をしてもらっているので「何がしたいのか」や「そのために何をするべきなのか」をジュンヤさんと話し合う機会があります。そこで渡してもらったり、新たに生まれた問いを常に深めるのが癖になってきた気はしますね。

あとはジュンヤさん含めinquireの人と過ごす時間が増えたので、考え方や言葉選びなどはかなり影響を受けているんだろうなと思います。

——確かに昨年行われた『パラレル親方』のイベントでも、雰囲気が似てるって言われていました。

岡田 自分ではそこまで意識していなかったので驚きました(笑)

ただ仕事以外の何気ない日常会話も含め、一緒に過ごすなかで仕事のヒントを得ることは多い。刺激し合えるメンバーや尊敬する方々と過ごせるのは、チャレンジングな仕事に挑戦できるのと同じくらい貴重ですね。たぶんこういう経験って、一人のフリーランスとしての仕事だとなかなか得づらい経験だと思うんです。

最近では関わる人も増え、コアとなるメンバーの周辺にグラデーション状に繋がりの輪が広がって様々な価値観が混ざり合ってきていると感じます。

僕自身、編集やライティングの仕事を始めた頃は特定の組織に属さず一人で働いていましたが、組織に属している今の方が思考の幅も深さも増したように思います。

ビジネスとカルチャーを横断へ、見据える未来

——チームや組織の今後について語っていただきましたが、個人としてこれから挑戦していきたいことはありますか?

岡田 ビジネスとカルチャーを横断した発信を続けて、カルチャーの領域でもビジネス的な視点が当たり前のように議論されるようにしていきたいです。
カルチャーの領域だと才能溢れるアーティストでも、稼げない、という理由がためにシーン全体が衰退し、シーンを去るような悲劇があります。このようなことを防ぐためにも、ビジネス的な視点は必要だな、と感じます。

僕自身も高校生の頃、DJとしてイベントを主催していましたが、赤字になることも多かった。その原体験があるので、カルチャーの領域でも収益的にサステイナブルな事業づくりに情報発信を通じて貢献したいです。

——昨年noteで始めた音楽ビジネス誌『gig』のテーマもそうした内容でしたよね。今後はどのような発信をしていく予定なのでしょうか?

岡田 アーティストやクリエイターが稼いでいくためのヒントや、音楽領域における働き方の多様化など、ビジネス誌と音楽誌の境界を超えて情報を提供していきたいですね。

すでに海外ではCDを売らずして成功しているアーティストなど、これまでにない事例も増えています。今はまだ事例が少ないですが、いずれ独自のビジネスを展開するという選択肢が当たり前になればいい。そのために必要な情報を発信していきたいですね。

もちろん音楽はメインの関心としてありますが、文化や社会全般がこれからどうなっていくかを観察し、より良い未来に向けたヒントを提示する存在でありたいですね。なるべく悲観論ではなくてポジティブなワクワクがベースにあるような。

——「人工知能で人間が滅ぶ」とかそういう文脈ではないということですね。

岡田 そうですね。悲観的な未来を語ることにアテンションが集まったりするじゃないですか。でも個人的にあまりそういった考え方に共感できなくて…。

社会は間違いなく変容するけれど、それを恐れて思考停止せずに、未来に向けて何ができるのかを考えていきたい。これはジュンヤさん含めInquireのメンバーに共通することかもしれないです。 そういう意味で「バイブス」が共有できているのかもしれません。

——岡田さんがこれから一緒に働きたいのも、その“バイブス”が共有できてる人になるんでしょうか?

岡田 そうですね。未来にポジティブな視点で向き合えるのかは、重要な要素だと思います。編集者をしていると未来をアップデートする手がかりに出会う機会が沢山ある。

そこで「このサービスが広まれば社会がよくなる」とか「この文化が当たり前になればいい」とか、そういうワクワクする感情を共有できる人と仕事ができたらいいなと思っています。

反骨精神を露わにするのではなく、現状を変えるための術を黙々と磨く姿が、時に周囲に「淡々としている」ように映るのかもしれない。けれど、地に足ついた発言の合間には、より良い未来を求める熱い想いが垣間見える。

その静かな熱に突き動かされて走る彼は、ビジネス×カルチャーの領域でどのような価値を提示してくれるのだろうか。その答えを探す道のりを見届けたいと思う。

 

(文:向晴香)

(フォトグラファー:金洋秀)


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